続・その味わいの思い出は永遠に~さようなら「天丼いもや」(千代田区神田神保町)
(この記事は、前回からの続きになります)
「とんかついもや」を出た私は、次なる目的地へと歩き始めた。
次なる目的地とは、こちらも本日をもって閉店する「天丼いもや(二丁目店)」のことである。
この日のために、昨夜は晩メシを抜いて、いもやを2軒ハシゴする腹づもりでいたのだ。
(まだそれほど、待機列が伸びていませんように…)
「とんかついもや」からは、徒歩にして約150m。祈る気持ちで、急ぎ足でその場所へ向かう。
しかし、そこで目に飛び込んできたのは、開店前の朝よりも若干伸びた行列であった。
店の裏通りまで、ずらっと並んでいるのは約80人。列にして70mといったところだろうか。
さきほどの「とんかついもや」での行列では、道沿いのガードレールに腰掛けて休憩を取ることができたが、今回の列は路地裏の小道ということもあり、座って待つことができない。
おまけに、列に並んでいる女性の比率が多くて、「とんかついもや」よりも待機時間が長くなるのは明白だった。
(一般的に、男性よりも女性の方が箸が進むスピードが遅いので、その分、自然と店の回転効率が落ちる。いもやは「回転重視」の経営なので、店員がハッキリと口には出さないが、ゆっくり食べる客はあまり良くは受け取られないフシがある。)
(何だか、普段この店に来ていたようには思えない年配のご婦人とかが結構いるみたいだし…
ラストデーとはいえ、店員さんが、一見客にイライラしていないことを祈ろう)
そう思いながら、しぶしぶ待つことにしたのであった。
12時45分から並び始めて、待つこと約1時間半強。
14時20分頃になって、ようやくのれんをくぐり、店内の列まで進むことができた。ここ(あと6人ほど)まで来れば、あと少しの辛抱だ!
この間に、普段はあまり見る機会がなかった、厨房での職人さんの揚げ作業を見守る。画像では分からないかもしれないが、銅鍋に入ったごま油の温度管理を、コンロの火をこまめに調節することで行う様子が観察できた。(↑画像は、微音カメラで、シャッター音が出ないように配慮して、撮影したものです)
昔、どこかの居酒屋で、板前さんから「揚げ物を美味く作るコツは、油の温度管理を一定に保つこと」と聞いた記憶があるが、このお店の美味しさの秘訣は、そんなところにもあるのかな、と妙に納得するのであった。
14時25分、先に食事していた客が退店して、ようやく自分の順番が回ってくる。
着席して、ほどなく注文していた「天丼(税込650円)」が到着。
天丼は、ごま油で揚げられた「きす」に「海苔」、「かぼちゃ」、「紋甲(もんごう)イカ」、「海老」5種の天ぷらに、自家製の甘辛いタレがかかったもの。
学生時代、食事は量(ボリューム)を重視していたこともあり、(とんかついもやに比べて)天丼いもやの利用回数は実はかなり少なかった。
(食べた回数を比率にすると、とんかつ:天丼=4:1ぐらい?)
その分だけ、思い入れは若干弱いかなと思っていたのだが、いざ天ぷらを口にほおばると、学生時代のあの頃の記憶がよみがえってくるではないか!
ここでも、天丼と一緒に供されるシジミ汁をすすりながら、一口、また一口と、天ぷらとご飯をかき込んでいく!
海苔天のパリパリとした触感、かぼちゃ天のホクホク感に、紋甲イカのぷりぷりとした歯ごたえ。
まさに、これは「触感の三重奏に、味の五重奏や~」!
(東京にいた頃は、「銀座ハゲ天」の天丼弁当や「天丼てんや」の天丼もよく食べたものだけど、この値段でこれだけの品質、味で食わせてくれる、いもやの揚げたての天丼には、やっぱり敵わないよなぁ…)
と改めて思いながら、最後は、しばし熱いお茶で一服するのであった。
「さて、行くか。ごちそうさま。20年間ありがとう」と言って、お金を払い、私は店を出た。
店を出ると、先ほどではないにしろ、まだまだ多くの客が列をなして、自分の順番を待っている。
どうやら、こっちの天丼いもやの職人さんも、準備した材料がなくなるまでは休むヒマもなく、今日は天丼を提供し続けることになりそうである。
(とんかつと天丼、二つのいもやをハシゴして、もう今日は思い残すことはないや。
さすがに歳のせいか、胃もたれがするから、どこかで胃薬でも飲んでゆっくり休もう…)
そう心の中でつぶやいて、私は神田神保町を後にしたのだった。
↑画像は、外神田の万世橋上から撮影したもの。
さらば、青春の味! さらば「いもや」! その思い出は永遠に!(終)
(後日談)
こちらの天丼いもやでも、いもやラストデーということで、いもや社長からの来店プレゼントとして、客1人ずつにチョコレートが振舞われていた。(女性の店員さんが、天丼が供されるタイミングで「社長からのプレゼントです」の一言とともに、一緒にチョコを渡してくれたのだった。)
チョコは、とんかついもやで配っていたものと全く同じもので、「カカオ88%」の苦いタイプのもの。
最後とはいえ、こんなに大盤振る舞いして、本当にいいのかな?と、こちらが心配になるぐらいでした(笑)
参考:
天丼いもや 二丁目店(2018年3月31日閉店)
営業時間:11:00~20:00 ※材料がなくなり次第、閉店
(定休日:日曜、祝日)
※今回閉店したのは、宮田静江社長の経営による直営店である。
元従業員が独立・開業した店舗4店舗では、引き続き「とんかつ」と「天ぷら」を食べられるので、「いもや」が好きだった方は、ぜひこちらの店舗をご愛顧・利用していただきたいと思う。
・神田神保町1丁目「天ぷら・いもや」
・東京・東神田の「とんかつ・いもや」