Dr.馬人の地サイダー探訪シリーズ~⑤Kyoei元祖パインサイダー(販売:丸大堀内株式会社)
唐突だが、私は趣味の一環として「日本地サイダー学会」の東北地方支部で、日本各地の地サイダーに関するデータ収集と品評を行っている。
名は、仮に「Dr.馬人(ドクトルうまびと)」とでもしておこう。
このシリーズ記事では、日本各地でひっそりと生産・流通している地サイダーにスポットを当てて、その魅力や美味しさなどを世にじわじわと広めることを目的としている。
さて、今宵もさっそく「地サイダー」の世界に、貴方(貴女)をいざなおうではないか。
第5回目に取り上げる地サイダーは、こちらである。
Kyoei元祖パインサイダー(販売:丸大堀内株式会社)
購入日時:2018年4月X日
購入場所:スーパー銭湯テルメ(山形県山形市)
総評:
まず一口、口に含むべく瓶に顔を近づけたが、これと言ってパインの香りはしない(香料は入っているようだが)。
ラベルには、しっかりと「無果汁」と書いてあり、もはや南国らしさを感じる要素は、黄色に着色された液体のみである。
口に含むと、果糖液糖のシロップの甘みしか感じない。
厳しい寒さの冬を過ごす北国の人間にとって、バナナやパイナップルなどの南国の果実に対する憧れが強く、昔からこれらの果物を謳った飲料やお菓子が非常に売れたということなのだろうか。
かつて(10年ほど前?)、Kyoei元祖パインサイダーの販売者は「山形共栄」という会社で、製造元は秋田県の「榎食品(※)」という会社だったはずなのだが、製造元が変わってレシピが変わってしまったのだろうか?
※榎食品とは…
秋田県秋田市新屋にある食品加工卸の小さな会社。かつては、湧水豊かな新屋という土地柄を反映して、タカラサイダーやラムネを製造・出荷していた。
湧水に少量の甘味料と炭酸を入れるだけで、製造コストのかからないサイダー・ラムネ飲料で大儲けしていたという噂もあったようだが、現在はサイダー事業から撤退し、きりたんぽの製造を主力事業にしているとか。
↑在りし日のKyoei元祖パインサイダー。秋田のタカラサイダーの瓶が転用されていた。
記憶が確かならば、昔のKyoeiのパインサイダーは甘味料に「サッカリン(※)」を使うなど、甘味にキレッキレの印象があっただけに、今回飲んだパインサイダーには全然味にインパクトを感じなかったし、何よりタカラサイダーの瓶が使われていないことで、ノスタルジーを感じるような要素もなかった。
一言、至極残念である。
※サッカリンとは…
水溶液はショ糖の350倍あるいは200‐700倍の甘味と痺れるような刺激の後味を持つ。かつての安全性(発ガン性)の懸念等から、日本の加工食品では他の甘味料に取って代わられている。
味 ★ 果糖液糖のシロップの甘みしかない
香り ★ パインサイダーを謳うならば、最低限パインの香りぐらいは感じさせてほしい
インパクト ★ 色はまっ黄色。インパクトはない
地サイダーらしさ ★ 製造元・販売元が変わってから、何かがおかしくなった?
(注)
- 「味」、「香り」、「インパクト」、「地サイダーらしさ」の各項目は5段階評価で点数付け。
- 評価の数字は大きいほど高評価で、☆1つで1ポイント、★1つで0.5ポイントである。
- なお、味の評価に公正を期すために、冷蔵庫で最低10時間以上、キンキンに冷やした状態のものを飲むこととする。
王道 ←*****→キワモノ (もはや評価不能)
残念ながら、私がかつて飲んでいた「共栄の元祖パインサイダー」は死んでしまった。
今回購入時の値段は税込260円。「無果汁」かつこの量を考えると、もはや新宿歌舞伎町のボッタクリバーもビックリの、ボッタクリ価格である。
コストパフォーマンスもすこぶる悪い(青森からの輸送コストが高いのか?)し、これならば、1.5ℓサイズのコーラを2本買った方がよほど満足度も高い。
消費者の舌も肥えている今、あと2年ももたず、絶滅する地サイダーとなるであろう。